歯周病の糖尿病への影響

歯周病は、歯周ポケット(歯と歯グキの間の溝)に入った歯周病菌の感染による慢性の炎症性疾患です。その発生方法(発症)や進み方(進行)には、微生物因子(歯周病菌)、生体因子(免疫機能)や環境(後天的)因子などが大きく関与しています。

 

 

環境因子には次のようなものがあります。

・喫煙
・口腔衛生状態
・歯周ポケットの深さ
・歯垢の付着量
・かみ合わせ ・ドライマウス
・お口の健康に対する意識
・歯科医院での定期健診
・生活習慣

 

生体因子には以下のようなものがあります。

・ 免疫機能
・年齢
・人種
・歯の本数や歯並び、かみ合わせ
・糖尿病などの基礎疾患

これらの要因が歯周病の予後に大きく関係してきます。

健康な方は血液中の糖分の濃度が高くなると膵臓からインスリンが分泌され身体の細胞に糖を取り込むよう働くことにより血糖値の上昇が抑えられます。ところが糖尿病の患者さんはこのインスリンが少なかったりあってもうまく働かないために血糖のコントロールがうまくできなくなります。 (この状態をインスリン抵抗性と言います)。

身体のどこかに炎症があると、糖尿病を悪化させることがあります。これは炎症のある組織から産生される炎症性サイトカインという物質がインスリンの働きを弱める作用があるために血糖値の上昇を抑えられなくなるためです。さらに糖尿病の患者さんの身体内では健康な方よりも多くなっている糖化蛋白質という物質が免疫細胞(マクロファージ)を刺激して炎症性サイトカインを産生したり、血管を狭くしたりすることによってインスリン抵抗性が亢進しています。

このような状態にくわえて歯周病が進行した方の歯グキではこの炎症性サイトカインが産生され、毛細血管から血中に入り、インスリン抵抗性をさらに増すため糖尿病が悪化しこれが歯周病の悪化を招くという悪循環に陥ります                               
逆に言えば、歯周病の治療により歯グキの状態が良くなると、炎症性サイトカインの産生が減少することにより、糖尿病の症状の改善が期待できることになります。