舌痛症をご存知ですか

平成25年8月19日(月) 東愛知新聞掲載

みなさんは、舌痛症(ぜっつうしょう)という病気を知っていますか? 舌が、ヒリヒリ、ピリピリ、ジンジンする、やけどをした様に痛くなる病気です。舌の先端や、舌の縁が特に痛く、眠る前にひどくなる事もあります。食事中、口に物が入っている時は痛みがないので、食事には支障がありません。舌が痛いと言いながら、食事ができるので、舌の痛さを訴えてもまわりの人には理解してもらえません。  
 てっきり変な病気に罹ってしまったと考え、思い切って病院に行っても、特に異常がなく「舌の神経痛」の様な病気ですね、心配しなくてもいいですよと言われてしまいます。  
 これは、「舌痛症」(ぜっつうしょう)と呼ばれており、舌の表面の外見は、異常がないのが特徴で、ここ数年、病院を訪れる患者さんが増えている病気です。  
 患者さんの多くが女性で、年齢的には四十歳代以上の方に多いのが特徴です。  
 原因はまだ、はっきりしていませんが、人によっては、入れ歯や被せ物、歯列矯正器具が口に合っていないため物理的刺激により痛みが出たり、歯の治療で使用される金属による金属アレルギーが原因となる場合もあります。味覚障害も伴っている場合には、血液中の亜鉛の欠乏も一因となっている事が考えられます。  
 また、更年期の女性に多いことから、ホルモンのアンバランスや、自律神経の変調なども関係があると思われます。精神的な原因で発症する方もおり、子供の独立や、自分や配偶者の定年、勤め先のリストラ、家族との死別などがきっかけで、舌痛症になる方もいます。  
 また、家庭の医学書などを読んで、異常に気にし過ぎて「自分は、ガンではないか」などと悩んでいる「ガン恐怖症」の人にこの病気が多いのも特徴です。  
 日々のストレスの増加などにより、うつ状態特有の症状がみられる方もいます。症状がその日の内に変わる日内変動、睡眠が浅いあるいは寝付けない、気分が晴れない、集中力の低下、何かに対する不安や恐怖感などです。  
 治療法は、一律ではありません。これをすれば治ると言うものはありません。入れ歯や被せ物の刺激が原因なら、歯科医院で治療してもらう必要がありますし、亜鉛が不足している場合には、亜鉛製剤を服用します。漢方薬が効く場合もあります。また、悩みや不安がある方には、抗うつ薬や精神安定剤を使用する事もあります。治療には、時間がかかりますが、あまり心配せず、根気よく治していく努力が必要です。  
 舌痛症以外で、粘膜などに異常がなく舌に痛みが出る原因としては、ビタミンB欠乏症、貧血、糖尿病、微量元素(鉄、亜鉛、銅など)の欠乏、カンジダ症などの感染症、高血圧、動脈硬化、薬の副作用、口腔乾燥症などがあります。  
 ご心配の方は、一度近くの歯科医院で相談して頂き、より高度に専門性を持つ先生を紹介してもらうのもいいと思います。