口の渇き(口腔乾燥症)について?

平成25年9月15日(月) 東愛知新聞掲載
豊橋市歯科医師会理事 鈴木誠一郎

口腔乾燥症は唾液の減少によって生じますが、原因はさまざまです。原因によって分類しますと、1.唾液をつくる腺自体の機能障害によるもの、2.神経性あるいは薬物性のもの、3.全身性疾患あるいは代謝性のもの、の3つに大別できます。  
 唾液をつくる腺自体の機能障害によるものとしてはシェーグレン症候群が代表的ですが、他にも放射線治療や加齢性変化による唾液腺障害も重要です。神経性あるいは薬物性のものとしては、うつ病、ストレス等の疾患や抗不安薬、抗うつ剤、降圧剤等の薬剤によるものが多いです。その原因として、中枢性及び唾液分泌神経系の抑制が挙げられています。全身性疾患あるいは代謝性のものとしては、脱水等による全身的な水分欠乏、糖尿病、腎障害、貧血等の全身性疾患が主な原因です。加えて、口呼吸、過呼吸、開口、摂食嚥下障害等に伴う局所的な水分蒸発によるものも含まれます。  
 唾液の働きは口腔の保湿、潤滑、浄化、歯や粘膜の保護、などの作用、食物の消化、味覚、緩衝などの作用、抗菌あるいは抗ウイルス作用、排泄、創傷治癒促進といった作用等があります。そのため、唾液が減少すればさまざまな病態を引き起こすことになります。  
 口腔症状としては口腔乾燥症の原因とは関係なく現れます。自覚的には口の渇き、飲水切望感、唾液の粘稠感、口腔粘膜や口唇の乾燥感や疼痛、味覚異常、ビスケットやせんべい等の乾いた食物を飲み込みにくくなります。他にはう蝕歯の多発、歯周病の増悪、歯や義歯の汚染、口腔粘膜の発赤、舌乳頭の委縮、口角びらん、口臭等が認められます。軽度の口腔乾燥症においては舌乳頭が委縮し、舌に苔が生えたような舌苔(舌の表面が白くなる)が増えることがあります。このような舌苔は口臭や口腔の不潔の原因ともなります。  
 また、口腔乾燥症に起因して摂食嚥下障害、嚥下性肺炎等の感染症、上部消化器障害等が生じることもありますので注意が必要です。  
 以上述べてきたような症状があるようであれば早急に受診され、口腔乾燥症であるかどうかの診断を受け、それに起因するものを早期に究明すれば重症にならないと思います。