だ液(つば)について

平成25年10月21日(月) 東愛知新聞掲載
豊橋市歯科医師会 松井和博

食欲の秋、食べ物が美味しい季節ですね。おいしい食べ物を想像するとジワーッと口の中でだ液(つば)が出てきませんか?今回はだ液についてお話しします。
まず、だ液は成分は、99%が水分で、残りの1%に重要な成分が含まれています。だ液は私たちが生活する上で、とても大切な働きがたくさんあります。
口の中の乾燥を防ぎ、うるおいをもたせることにより、食事やおしゃべりをしやすくします。さらに、味覚物質を溶かし舌の味覚を感じやすくさせたり、でんぷん等を分解して、食べ物を口の中で混ぜ合わせ飲み込みやすくします。 
 また、抗菌・殺菌作用があり、がん細胞の発生を抑制する酵素が含まれていることも判ってきました。
だ液はムシ歯予防にもとても重要な働きがあります。初期のムシ歯(C1になる前の段階)に対して、だ液の中にあるカルシウムやリンにより再石灰化(歯の結晶構造を直す)を促進して、ムシ歯を治す効果があります。間食が多かったり、だ液の量が少ないと、口の中ではムシ歯の進行しやすい環境を作ってしまって、その危険率が高くなってしまいます。
だ液と歯周病との関係は、初期の歯周病なら、原因とされる歯周病菌に対しして、だ唾液の抗菌・殺菌作用が期待できます。ただし、歯周病が進行してしまった場合は、効果がありません。
 また口臭に対しても、口臭の8割以上が口の中の乾燥・舌苔(舌の上の汚れ)・歯周病から起因していて、だ液のもつ自浄作用や抗菌・殺菌作用などにより、これらを改善できると言われています。
義歯を使われている方にとっては、義歯の維持・安定に、だ液による粘着力と接着力が有効とされています。
日頃はあまり意識もしていないだ液ですが、私たちの生活に中で、からだの健康に大きく関与していることがわかります。
 だ液を十分に出すには、ゆっくりとよく咬んでだ液腺を刺激することが必要になります。  
よく噛むためにも、ムシ歯や歯周病のない健康な歯と歯グキを保つことが、だ液をしっかり分泌させるのに必要なことなのです。