歯磨きをしっかりやれば歯周病は防げるのですか?

平成25年10月28日(月) 東愛知新聞掲載
豊橋市歯科医師会 松井和博

はじめに皆様に質問です。
歯周病、という言葉はご存知だと思いますが、その対策はどうしていますか?「え、歯周病予防には歯磨きが一番じゃないの?」とおっしゃる方が多いです。
ちょっと待ってください。皆様で歯の本数をご存じの方はどれだけいますか?「・・・」意外と知らない方が多いですね。実は28本(親知らずがある方は32本)です。「そんなにあったの?」いや逆に「それだけしかないの?」と思う方もいます。その28本あった歯が80歳になると実は10本程度です。その半分が歯周病で失われているのです。歯が抜けてしまうと「よく噛めない」といわれます。「歯がなくなったら入れ歯にすればなんでも噛めるんじゃないの?」といわれる方もいますが、実はそんなに甘くはないのです。入れ歯はご自分の歯に比べて噛める能力が半分以上、状態によっては8割近く落ちる方もいます。
そんな状態ではスルメも草加せんべいも味わうことができなくなりますよ。どうします?
日本人はきれい好きで有名です。歯磨きも若い世代では、1日平均2回以上という状況になっています。その日本人の多くが歯周病になっている、ってどういう事だと思いますか?実は歯は磨いていても口の中のバイ菌がいなくなっているわけではありません。多くの方の歯ぐきには「歯周ポケット」という隙間があります。健康な方はその隙間である歯周ポケットがほとんどないのですが、そのポケットの中に悪さをするバイ菌が非常に多く残るのです。「それなら頑張って歯ぐきの中まできれいに磨けばいいんじゃないの?」という方もいますが、実験により歯ブラシで歯ぐきの中まで届くのは1ミリ程度まで、というデータがあります。歯周ポケットは4ミリ以上ある方も多くいらっしゃいます。そんな深いポケットまで歯ブラシは残念ながら届きません。どうしましょう?
そこで困ったときにはかかりつけの歯医者さんに伺ってください。かかりつけの歯医者さんで定期的に健診してもらい、歯周ポケットの中まできれいに掃除してもらうと、あら不思議、バイ菌は悪さをしなくなります。これが定期的健診の重要なところであり、皆様にとって大きなメリットなのです。 ご自分の歯磨きだけで十分、と思っていたそこのあなた。どうぞお気をつけ下さい。