先天欠損歯(先天欠如歯)とは

平成26年5月5日(月) 東愛知新聞掲載

永久歯は上下顎で合計28本ありますが(親しらずは除く)、生えて来るべき永久歯が生えて来ないことを「先天性欠如」と言います。
本来乳歯の下では将来永久歯になるための歯胚が育っていますが、何らかの理由で歯胚が出来ない場合は永久歯が萌出せず、先天性欠如歯となります。先天性欠損歯、無歯症とも言います。先天性欠如の原因は明らかにはっていません。遺伝や妊娠中の栄養欠如、全身疾患、薬物の副作用などが考えられていますが、因果関係ははっきりしていません。したがって予防することは出来ないのが現状です。

先天欠如歯の割合は約10人に1人、1本~数本の永久歯の先天性欠如が認められます。第三大臼歯(親しらず)は対象となっていませんので、最も多いと考えられる親しらずの先天性欠如を含めると、永久歯の先天性欠如30~40%にのぼると言われています。

どの歯に先天欠如を認めやすいかは、上顎(約.4.37%)より下顎(約7.58%)と発生頻度が高く、部位的には左右共に第二小臼歯(5番)と側切歯(2番)に多く認められました。

一般的に永久歯への生え変わりは、歯肉の中で永久歯が十分に育って萌出を始めると、その上にある乳歯の根が吸収されて短くなり、やがて抜け落ちます。
これが歯の生え変わりのメカニズムですが、永久歯が育っていないと乳歯の根は吸収されませんので、大人になっても永久歯が生えるべき場所に乳歯が残ったままになります。永久歯が欠如している場合は、乳歯を出来るだけ長く残すようにします。個人差がありますが、20代~30代まで乳歯が残っているケースもあります。
しかし乳歯は永久歯と比べて根が浅く、また虫歯になりやすいなど歯質自体も永久歯より弱いため、永久歯の代わりに一生ずっと残すことは非常に難しいと考えてください。先天性欠如部位から乳歯が抜けてしまうと、一般の欠損歯と同じ状態になります。歯が失われたままの状態が長く続くと両隣の歯が欠如部分に向かって倒れて来たり、欠如部分と向かい合う歯が伸びて来たりして歯並びやかみ合わせを悪くなります。虫歯や歯周病で歯を失った場合と同様に、先天性欠如部位で乳歯を失った場合は早めに欠損治療を受けられることをおすすめします。