糖尿病と歯周病の関係

平成27年8月24日(月) 東愛知新聞掲載

糖尿病は、膵臓で作り出されるインスリンというホルモンが十分に作られなくなって、それによって体の働き(免疫機能)が低下して、細菌感染に引き起こしやすくなり、傷などの治りも悪くなるなど、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなる状態が続くことです。
 日常生活においても、「口が渇く」ために「多飲」「多尿」「多汗」といった症状が現れます。
 50歳から60歳代の男性に多く、40歳以上では約10人に1人が糖尿病患者であるといわれています。
 生活習慣や社会環境の変化に伴って急速に増加しており、喫煙、食べ過ぎ、運動不足、お酒の飲み過ぎなどが原因と言われています。
 また、遺伝的な影響も関与していることも判っています。
 一方、歯科における歯周病の危険因子の1つとして、糖尿病が挙げられます。
  「糖尿病と歯周病」の関係については、これまでに数多く報告がなされています。健康な人と同レベルに血糖値を保つことを「血糖をコントロールする」といいます が、血糖のコントロール状態と歯周病の状態を比較した調査では、血糖のコントロールの状況が悪い人ほど、歯周病がより進行することが判りました。
 歯周病が重度になると、歯がグラグラしたり、噛むと痛かったり、腫れたりと、歯の存在自体がままならない状況になり、最終的には歯を失うことになります。
 このような状況下では、きちんと食事をすることが難しく、咀嚼障害(噛むことが出来ない状態)によって食事の量が減少したり、食べ物が偏ることから、食事療法や薬物療法が正しく行えなくなる可能性があり、血糖のコントロールが悪くなる危険性が増すとことになります。
 また逆に、歯周病は細菌感染症なので、前述したように、糖尿病による免疫機能の低下により、歯周病菌感染を引き起こしやすい環境となり、歯周病の病状は進行してしまいます。
 歯周病を放置すると、糖尿病そのものに悪影響を与え、血糖のコントロールが悪くなるために、さらに歯周病が進行しやすくなり悪循環の繰り返しになってしまいます。
 一方で歯周病が改善されると、糖尿病の状態も改善されるという報告があり、注目を集めています。
 生活習慣病といわれる歯周病を治療することで、同時に多くの方を悩ませている糖尿病の改善を期待できるというのは、とても魅力的なことです。
 大切なことは、歯周病が全身の健康にも関わるということを理解していただき、全身の健康を維持するためにも、歯周病の治療に目を向けていただきたいと思います。
 糖尿病が歯周病治療で改善することができれば、全身の健康に対する歯科治療の意義も高まり、健やかな長寿社会を実現するためにも必要なことだと思います。
 また、我々歯科医にとっても、歯科領域から全身の健康に関われることは、大きな励みとなります。
 是非、健康を維持するためにも、お近くの歯科医院で定期的な健診をされることをお勧めします。