「咀嚼(そしゃく)」して痴呆を防ごう!

平成27年9月28日(月) 東愛知新聞掲載

皆さんは毎日よく噛(か)んで食べていますか?
 咀嚼(そしゃく)とは、「噛む」ということです。
 「噛む」ことは日常的におこなっている動作ですので、あまり意識していないかもしれませんが、身体に対してとても良い効果があり、健康生活にとっても欠かせないことなのです。
 ものをよく噛んで食べると上の顎(あご)と下の顎を結んでいる咀嚼筋が動くと、脳の血液の循環が良くなって、神経回路の働きが活発になり、脳の機能が高まります。
 噛むことで脳の細胞が刺激され、活性化することで痴呆(ちほう)防止に効果があるのです。
 痴呆=ボケとは、脳が障害を受けて、適正に機能せず、社会生活に支障を来たす状態のことを言います。
 原因は大きく分けて2つあり、脳出血や脳梗塞などの脳血管の病気によるもの(血管障害性痴呆)とアルツハイマー病によるもの(アルツハイマー型痴呆)です。
 現在、痴呆患者の数は約150万人いるといわれ、特にアルツハイマー型痴呆が増加傾向にあると言われています。
 痴呆症状の進行と歯の噛み合せ機能の低下には密接な関係があり、実際痴呆患者の義歯(入れ歯)を噛めるようにしたところ痴呆症状が軽減されたという報告があります。
 また、「歯の数が減ると脳が萎縮(いしゅく)する」という報告もあります。
  アルツハイマー病になると、大脳の海馬(かいば)という部分が萎縮するこ とが解明され、残っている歯が少ない人ほど、記憶をつかさどる海馬付近の容積が減少していることが、東北大大学院の渡辺誠・歯科研究長らのグループが突き止めました。
 それによると、「噛むことで脳は刺激されるが、歯が無くなり歯の周辺の痛みなどの神経が失われると脳が刺激されなくなる。それが脳の働きに影響を与えるのでは・・・」、つまり痴呆防止のためには、自分の歯の数を保つことも大切なことなのです。
 「噛む」ことは、脳との連係プレーです。
 軟食グルメ嗜好の我々は噛むことの大切さを忘れがちですし、歯の無いバランスの悪い状態で噛んでいては、脳とうまくキャッチボールができません。
 痴呆防止の他にも、成長発育中の子供たちには、顎(あご)の発育を促進させ、きれいな歯並びを作ることに役立ちますし、スポーツ選手が試合中によくガムをくちゃくちゃ噛んでいるのは、噛むことによって大脳に血液が大量に送り込まれてリラックスできるからです。また、頭痛の解消にもなります。
 その他にも、「噛む」ことで唾液の分泌を促進させ、唾液中に含まれるペルオキシターゼという酵素が、発がん性物質の毒消しの役割をはたしていますし、よく噛んでゆっくり食べることは、血糖値が上昇して、早くに満腹感が得られ、肥満の防止にも役立ちます。 大切な歯をムシ歯や歯周病で失うことのないように、定期的にかかりつけの歯科医院で適切な処置や指導を受け、健康な老後をむかえるためにも、日頃からしっかりと噛む習慣をつけることが大切です。