歯ぎしり
平成27年11月30日(月) 東愛知新聞掲載
友人と一緒に旅をしたり、会社の慰安旅行などで、夜中に「石でも擦り潰すようなギリギリ」という雑音で目が覚めて経験はありませんか?
その音の主は、睡眠不足で寝つけなかった私の隣でぐっすり寝ている同僚であり、友人の「歯ぎしり」なのです。
「歯ぎしり」には、上下の歯を横に擦り合わせることによって起こる「グラインディング」、上下の歯を噛み込んで食いしばる「クレンチング」、細かくカチカチと上下の歯を噛み合わせることによって生じる「タッピング」の3種類があります。
そのメカニズムは、顎(あご)の筋肉が異常な緊張によって起こります。程度の差こそあれ、大抵誰にも起こりうるものです。 主に睡眠中に発覚し、他人に迷惑をかけ、指摘されて初めて気づくことが多いようです。
このような夜型の「歯ぎしり」は、歯を擦り合わせて起こるものと食いしばりによって起こり、浅い眠りの時(レム睡眠)に起こりやすく、睡眠障害によるものです。
睡眠中は大脳皮質が抑制され、噛む力がコントロール出来なくなるために、とても強い力で顎(あご)の筋肉を動かして「歯ぎしり」が起こります。
「歯ぎしり」が起こるのは、寝ている時だけとは限りません。
日中に仕事に集中していたり、緊張した状況にあったり、悔しい時などは、無意識の内に上下の歯を噛み締め食いしばることで「歯ぎしり」をすることがあります。
目が覚めている時は、音を出すことはありませんが、たとえ弱い力であったとしても、長時間食いしばっていると、頭の筋肉が疲労を起こし偏頭痛が起こることもあります。
このように、昼夜を問わず無意識に「歯ぎしり」をしています。
「歯ぎしり」の原因は、疲労・歯の噛み合わせ・遺伝などがあげられますが、現代病の象徴であるストレスという説が最も有力視されています。
ストレスを発散させるために、大人でも、子供でも「歯ぎしり」はあります。
また子供の場合には、歯の生え換わりや骨の発育に関与した「歯ぎしり」もあり、これらは成長と共に自然に消失することがほとんどです。
「歯ぎしり」によって、肩こり・偏頭痛・顎(あご)の疲れ・目の奥の痛みなどが起こることがあります。
歯科では、歯がすり減ってしまって噛み合わせのバランスが悪くなったり、 歯グキの近くの歯がくさび状に減ったり、歯が割れたり(破折)、治療したセラミックや樹脂でできた冠が割れることもあります。
また、歯周病が進行したり、顎(あご)の関節がずれたり、睡眠時無呼吸症候群との関連性も指摘されています。
「歯ぎしり」の治療方法としては、原因であるストレスを軽減させる自己暗示・睡眠療法・薬物療法などがあります。
歯科医院では、噛み合わせの悪い歯を調整して、顎(あご)の筋肉の異常な緊張を取り除いたり、睡眠時に口の中に装着するマウスピースのようなナイトガードを製作して、噛む力を分散させて負担軽減により治す方法があります。
ナイトガードは、昼間でも装着可能であれば、食いしばりよる「歯ぎしり」からストレスを分散させることも出来ます。
「歯ぎしり」の治療は、健康保険が適応されています。
お悩みの方・お困りの方は、一度かかりつけの歯科医院で相談してみて下さい。