子供の「受け口」を考える

平成27年12月7日(月) 東愛知新聞掲載

前歯の噛み合わせが上下逆な状態を受け口(反対咬合)と言います。
 今回は、子供の受け口をどのように対応したらよいのかを、一緒に考えてみたいと思います。
 まずは、受け口を放置するとどうなるのかを考えます。  受け口は本来の噛み合わせとは全く逆なので、下の前歯の歯グキや歯を支える骨(歯槽骨)がなくなりやすく、歯がぐらついてくる可能性があります。
 歯だけの位置関係による受け口ならば、あまり顔が突出した特徴は見られませんが、下アゴの骨が前に出ていると、とても治りにくい受け口(骨格性反対咬合)になり、見た目も顔つきが「しゃくれ顔」「三日月顔」になります。  
 子供の噛み合わせが、必ずしも大人になっても同じ噛み合わせになることはありませんが、受け口や出っ歯(上の歯が出ている噛み合わ)は成長過程において注意する必要があります。
 受け口は「見つけた時が治療の時期」と言われますが、年齢に応じた歯並びの状況で考えることを大切です。  受け口の一般的治療概念は、早期発見・早期治療・早期治癒といった短期的な治療で完了することはありません。早期発見・早期治療・長期観察を経て、子供の成長終了後の治療で完了するといった長期的な治療になります。
 早期初期治療・第一期治療・第二期治療に分かれた治療方法と管理を行ない、状況によっては外科的手術も考慮に入れます。
 通常は前歯の噛み合わせの改善を目的とした早期初期治療、第一期治療を行い、経過観察のあと、成長終了後もしくは直前に第二期治療を行い治療完了となります。
 年齢別の対応は、「1歳半~3歳(乳歯列完成前期)」では、治療ができる年齢ではないので、問診によりご家族の口の中の状態や摂食状態を把握します。
 乳歯が生え揃う4歳頃にもう一度見せていただくことになります。  「4歳〜5歳(乳歯列期)」の時期は、治療をしても必ずしも永久前歯が正常な噛み合わせにならない(受け口の自然治癒の可能性は6.5%と極めて低い統計データ)こともありますが、少しでも受け口の状態の期間を少なくするために、早期初期治療をして管理することを勧めまず。但し、必ず永久歯が正常な噛み合わせになるということは約束できませんが、ムーシールドという装置で治療効果を向上させます。
 「5歳〜7歳(乳歯前歯交換期)」は、一部の乳歯と永久歯の交換時期です。噛み合わせの改善効果が解り難いので永久歯萌出まで待つことにしています。
 「7歳〜8歳(下の4本の前歯、上の2本の永久前歯萌出期)」では、上の前歯の永久歯2本の噛み合わせを改善するために、機械的な装置を用いて第一期治療に入ります。
 「8歳〜9歳(上下4前歯萌出完了期)」では、引き続き前歯の永久歯の噛み合わせを改善し、上下のアゴの骨の位置関係を改善します。その後に、歯の凸凹が出現したり、歯並びの中心にズレが出現したり、子供の成長で再び逆の噛み合わせになることなどが発生しやすき時期なので、十分に注意を払います。
 「12歳〜13歳(永久歯萌出完了期)」の時期は、成長の真っただ中なので、上下のアゴの位置関係や前歯の噛み合わせ状態をチェックしながら、治療時期を模索します。この時期に下の顎の発育が著しくない場合は本格矯正治療(第二期治療)に移行することもあります。
 そして「男:18歳、女:16歳(成長終了期)」では、第二期治療(本格矯正治療)を行います。矯正治療単独で治療するか、それとも外科矯正手術を併用するかを決定します。
 「適切な時期に、短期間で治療する」ことは理想ですが、受け口患者さんに、その言葉を当てはめることはとても難しいことです。
 定期健診を継続して、治療の要・不要をその都度検討しながら、少しずつ時間をかけて治療していくことになります。