斑状歯(はんじょうし)とフッ素効果

平成28年2月8日(月) 掲載

斑状歯は、1916年アメリカのロッキー山脈地方における地方病として初めて報告されました。  
 フッ素を過剰摂取することによって、歯の表層部のエナメル質が白濁した不透明の斑点や縞(しま)模様が現れたり、歯の表面全体が白濁したりするもので、 重症なものは、褐色に着色したり、実質欠損(エナメル質が欠けている状態)を伴うこともあります。
 その後の調査で世界各国でも発見され、わが国でも各地でその発生がみられました。
 当初は原因が不明でしたが、1931年に飲料水中のフッ化物に起因するものであることが確認されました。
 斑状歯は主に永久歯にみられるものですが、フッ素が高濃度の地域では、乳歯の奥歯にも軽度なものがみられ、歯の萌出が遅れる場合もあります。  
 では、フッ素は本当に歯に対して悪影響を及ぼすものなのでしょうか?
 1930年代から、斑状歯が多発する地域に、ムシ歯の少ないことが注目され始め、その後の調査で、適量なフッ素がムシ歯予防に非常に有効であることが確認されました。
 その結果、1940年からムシ歯予防にフッ素塗布が行われるようになり、また1945年には、アメリカのミシガン州グランドラピッズ市において飲料水へ安全な濃度のフッ素添加が行われたのを皮切りに、世界のさまざまな地域において、飲料水へのフッ素添加が行われるようになりました。
 水道水にフッ素を加えることは、ムシ歯予防の方法として最も有効なものであることはよく知られています。
 世界の予防歯科の研究者の実験結果からも証明されており、世界の70カ国以上の水道で安全な濃度のフッ素添加が実施されています。
 日本では、飲料水へのフッ素添加については賛否両論があり、現在は行われていませんが、1955年スイスでフッ素添加の食塩が販売されたのをきっかけとして、ガムなど一部の食品にフッ素が添加されたものが、日本を含め世界各国で市販されています。
 また、1947年(昭和22)に日本においてもフッ素を添加した歯みがき剤が市販され、その後は多種のフッ素入り歯みがき剤がでまわっています。
 歯みがき剤等の医薬品や食料品などに添加されているフッ素は、配合量も安全な範囲内で安心して使用(利用)できるものです。
 よって、ご家庭でフッ素入り歯磨き剤でブラッシングすることは、世界が認める最も安全なムシ歯予防法になります。
 歯医医院などで行われるフッ素塗布(安全な範囲内の高濃度)と、家庭でできるフッ素洗口やフッ素入り歯みがき剤を用いたブラッシング(低濃度)では、フッ素の濃度がまったく違いますが、これらを上手に使うことが効果的なムシ歯の予防につながります。