フッ素洗口について

平成28年3月7日(月) 掲載

フッ素は人体や動物、植物や土の中、海水や川の水など、自然界に広く存在している元素で、カルシウムと同じく歯や骨の構成成分として含まれています。
 歯の質の強化に用いられ、ムシ歯の予防法としてフッ素塗布は有名な方法で すが、他にもフッ素洗口という方法があります。
 今回は、「フッ素洗口」についてお話します。
 フッ素洗口には、一般的にフッ化ナトリウム溶液が用いられます。
 市販されている薬剤としては、オラブリスやミラノールがあります。
 薬剤を水道水で溶かして洗口液を作り、飲み込まずに指定の時間洗口して、 吐き出す能力が備わった人であれば、どの年代層の方でも適応します。 口の中でぶくぶくうがいするだけで、歯の表面にフッ素が添加されて、歯質が強化されます。
 身体の弱い子どもや身障者の方がフッ素の影響を受けることもありません。
 またフッ素は、自然界に広く存在するものだけでなく、日常生活の中で飲食 物としても摂取されています(大人で1日約1~3mgのフッ素を飲食物より摂取され、フッ素洗口による摂取は0.2mg程度とごく僅かです)。
 一方で、フッ化物の利用を反対する声もありますが、フッ化物の摂取量を無視して、濃度だけで危険性を指摘する意見が多いようです。
 例えば、水道水にフッ化物が添加されている濃度は1ppmなのに対して、フッ化物洗口液は250ppmで、250倍も濃度が高いことから危険だと思われるかもしれませんが、実際には、水道水は摂取するものに対し、フッ素洗口液は口に含んで吐き出すので、当然のことながらフッ素の摂取量は少なくなります。  
 たとえ誤って、1回分の全量を飲み込んでも心配はいりません。  
 フッ素の急性中毒は、体重1kgあたり2mgのフッ素を摂取した場合に発現します。体重20kgの子供であれば40mgのフッ素摂取に相当します。  
 0.1%NaF(フッ素として450ppm)の洗口剤7mlで洗口するのであれば、洗口液中には3.2mgのフッ素が含まれていますので、40mg/3.2mg=12.5となり、誤って12.5人分以上のフッ素洗口液すべてを同時に飲み込んだ場合に、急性症状は発現しますが、現実には考えられません。
 また他方では、歯のフッ素症を心配する向きがあります。
 これは歯のエナメル質表面に白斑や縞状の白濁部が散在することで、あごの中で歯がつくられている時期に、高濃度のフッ素を長期間摂取することで現れます。したがって、永久歯の前歯に歯のフッ素症が発現するためには、出生から4歳頃までの間に、継続的に一定以上のフッ素を摂取しなければ発生することはありません。
 我が国においては、フッ素洗口の開始年齢もうがいが出来る5歳頃から、さらにフッ素洗口液の濃度も低く抑えられていますので、殆ど問題はありません。  
 フッ素洗口は、家庭でおける子供のムシ歯予防、高齢者の根面ムシ歯の予防など、安価で簡単にできるツールとして、どの年代層の方にもご利用いただけるものです。