妊娠中ですが、歯グキから出血するのが心配です?

平成28年5月2日(月) 掲載

妊娠中は、女性ホルモンが亢進することによって、口の中に様々なトラブルが発生しやすい期間です。
 つわりや新陳代謝障害、体温の上昇等に関連して、だ液に粘り気が出てきたり、口の中も酸性が強くなって、1回の食事量が低下することで食事を分割して摂ったりして、プラークコントロールも疎かになり、プラーク(歯垢)の付着やムシ歯菌の増殖から、ムシ歯に罹患するリスクが妊娠中は高くなります。
 また、妊娠中の歯科医泣かせな疾患は「親しらず」です。
 特に、歯グキの中に埋まっている(埋伏歯)歯の周囲の歯グキが炎症を起こしやすくなります。
 妊娠中は母子への影響を考慮して、抗生剤や鎮痛剤等の薬の処方にも注意を払わなければなりませんし、抜歯等の処置に対しても安定期という制約があり、妊婦の方もストレスが溜まります。
 そして、今回のタイトル「妊娠中の歯グキからの出血」です。
 妊娠中は、女性ホルモンのバランスが変化し、歯グキが腫れる「妊娠性歯肉炎」が、妊婦の30%程度の方に、妊娠2ヶ月頃から発病することがあります。
 特に、初めて妊娠された方に多いようです。
 前述のように、妊娠中は間食が増え、その結果口の中の衛生状況が悪化する傾向にあります。
 「歯肉炎」はその名の通り歯肉に限局した炎症ですが、プラークコントロールが儘ならない妊娠中は、口の中のケアも疎かになり、「歯周炎(歯槽のうろう)」に発展してしまうと、歯グキだけではなく、歯を支えている周囲の組織(歯根膜や歯槽骨)も悪くなりかねないので、妊娠前よりも歯磨きがとても重要になります。
 この「妊娠性歯肉炎」は、出産後は消失してしまいますので心配はいりませんが、治るからといって、何もしないのは駄目です!
 歯グキからの出血は、歯磨き(ブラッシング)で軽減できます。
 柔らかめの歯ブラシを用いて、歯グキをやさしくマッサージするように磨いて下さい。
 つわりが酷く、思うように歯磨き(ブラッシング)ができない時は、うがい薬などを用いて口の中を清潔にしておくことも重要です。
 状況によっては、「(妊娠性の)口臭」や「妊娠性の口内炎」が発生することもあります。
 また、歯周病(歯肉炎&歯周炎)に罹患した妊婦は、そうでない方と比べて37週以前の早産や、2500㌘以下の低体重児出産の危険性が7.5倍も高くなるという衝撃的な報告があります。
 妊婦の皆さんにとって、口の中のケアはとても大切です。
 つわりが落ち着く4カ月頃に、お近くの歯科医院で妊産婦歯科健診や生活指導を受けられることをお勧めします。
 何か問題があれば、安定期といわれる妊娠中期(4.5カ月~7カ月頃)、もしくは産後を待って、歯科の治療をされることをお勧めします。
 歯の健康状態がよければ、何でもおいしく食べられ、精神状態も安定します。
 生まれてくる赤ちゃんのためにも、歯と口の健康に十分に配慮されるように心がけて下さい。