歯科衛生士が担う次世代歯科医療
その1 なぜ歯科衛生士なのか?

平成28年7月4日(月) 掲載

歯科衛生士という職業は知っていてもその実態はよくわからない、という方が結構いらっしゃるのではないでしょうか。今週から3週にわたりその職業の重要性について知っていただくためのお話をしたいと思います。  40年ほど前までは「虫歯の洪水時代」などと言われ、歯科医院の前には診療時間前から予約を取る行列ができたと聞いています。「3時間待ちの3分診療」などと歯科医院に対する風当たりも強かったようですが、その後ご存じのように全国に歯科大学や歯学部が増えて、歯科医師数および歯科医院数も急激に増加しました。さらに、歯科衛生教育の浸透などにより虫歯の数も急激に減少し、虫歯の洪水時代には後回しにされがちだった慢性疾患である歯周病にもやっと注目される時代が到来しました。  平成元年から始まった80歳で20本の歯を残そうといういわゆる「8020運動」ですが当初の達成率は7%ほどだったそうです。しかし厚生労働省が6年に1度行う「歯科疾患実態調査」の平成23年度の結果では約38%の人が達成していて、平成29年度に予定されている同調査では50%超えを予測する声もあります。成人が歯を失う最大の原因は歯周病なので、前述の歯科医院数の増加に加え、予約診療による計画的な治療や定期歯科健診の一般化および歯科衛生士の活躍が8020の達成率向上に大きく寄与していることは間違いありません。
 しかし現状を手放しで喜んでばかりもいられません。なぜなら20本以上自分の歯を有する高齢者にもやがて歯科医院へ通院することやブラッシングのようなセルフケアが困難になる時が必ず訪れるからです。即ち要介護状態の患者さんのお口の健康をどう守るかが大きな課題となるのです。歯科医療の特性から診療室と同じレベルの診療を在宅診療で行うことは極めて困難なので重症化する前の予防が重要なのですが、介護に疲弊した患者家族や多忙を極める病院の看護師、介護施設職員に要介護者個人個人の毎日のしっかりした口腔ケアを要求するのは現実的ではありません。そして残念ながら現在の医療保険も介護保険もこの課題をクリアするには至っていません。
 そこで注目されるのが歯科衛生士です。歯科衛生士は虫歯や歯周病の予防を専門とする国家資格を持つお口の健康のスペシャリストです。すでに病院や介護施設で活躍している歯科衛生士もいますが、これから加速する超高齢化社会に対応できる人数にはまだ到底及びませんし、在宅の要介護者とどのように関わってゆくのかも今後の課題です。しかし歯科衛生士が関与しない今後の歯科医療、要介護者の口腔ケアはあり得ません。  
 豊橋には豊橋市歯科医師会が運営する豊橋歯科衛生士専門学校があり、7月21日、7月28日、8月25日にオープンキャンパスを開催します。歯科衛生士という職業の詳細がわかると思いますのでご興味のある方は是非ご参加ください。歯科衛生士が超高齢化社会のお口の健康を守るキーパーソンになることがご理解いただけると思います。