歯科衛生士が担う次世代歯科医療
その2 歯科衛生士にできること

平成28年7月11日(月) 掲載

先週は、超高齢化社会における歯科医療にとってなぜ歯科衛生士が重要になってくるか、ということについてお話をしました。今週はさらに具体的に、その仕事内容についてお話をしたいと思います。 
 自分で歯磨きが困難になると、急激に虫歯や歯周病が進行し、痛みや腫れの原因にもなります。またそれに伴う口臭も介護の現場では悩みの種です。特に高齢の患者さんでは唾液の分泌が少なくなり(唾液の減少の原因は加齢だけでなく利尿剤や向精神薬等の内服薬の副作用でもおこりますが)、これは自らお口の中を洗浄する作用が低下することを意味します。カビの一種であるカンジダ症なども発症しやすくなりお口の中の環境崩壊は加速度的に進みます。8020を達成しながらやがて通院困難になる患者さん、そしてその患者さんが努力して残した歯が苦痛の原因になるという皮肉な現実を我々歯科医療に携わる人間はどう受け止めたらいいのでしょうか。
 歯科衛生士の仕事は大きく分類して「歯科予防処置」、「歯科診療補助」、「歯科保健指導」があります。診療室では「診療補助」も大切な業務ですが、在宅歯科医療においては「歯科予防処置」と「歯科保健指導」が重要な業務になります。
 まず「歯科予防処置」とは文字通り歯科疾患の予防すなわち治療が必要にならないようにお口の状態を維持することです。歯科の2大疾患である虫歯も歯周病も原因は歯の汚れすなわち歯垢です。つまり原因となる細菌をコントロールできれば虫歯も歯周病も予防できることになります。お口の中を完全に無菌的な状態にすることは不可能なので、細菌の絶対数を減らすことを目標にして歯垢・歯石の除去を行います。虫歯予防の場合はさらにフッ素なども応用すると効果的です。この予防処置こそ歯科衛生士が最も得意とする分野です。在宅の場合でも十分対応できるので、歯科衛生士の人数がもっと増加し、要介護者の訪問口腔ケアを日常的に行うシステムができれば相当な効果が期待できます。
 そして通院できなくなってしまった要介護の患者さんに自宅で自分でできるお口の中のケアの方法を一緒に考え、時には介護するご家族にケアの方法や各種口腔ケアグッズの使用などを提案すること、つまり「歯科保健指導」も歯科衛生士ができる実効性のある大切な職務であると考えています。
 前回の稿でお話ししたように歯科疾患の場合、重症化すると在宅で十分な診療ができないことがあります。その前の段階で食い止めること、すなわち予防がとても大切なのですが、まさにそのスペシャリストこそ歯科衛生士なのです。
 豊橋歯科衛生士専門学校では、7月21日、7月28日、8月25日にオープンキャンパスを開催します。歯科衛生士の職務の詳細がわかると思いますのでご興味のある方は是非ご参加ください。歯科衛生士が超高齢化社会のお口の健康、全身の健康をどのように守ることができるかがご理解いただけると思います。