歯を失うと口の中はどうなるのか

平成28年9月5日(月) 掲載

不幸にして歯を失うと、歯並びにさまざまな変化が起こり、口の中でいろいろな不都合なことが発生します。
 通常、「智歯(親知らず/前から数えて8番目の歯です)」を除けば、口の中に上と下に14本ずつの歯が寄り添って並び、その形は全体的に馬蹄形のように見えます。
 これを専門的には歯列(歯並び)と呼んでいます。
 また、1本1本の歯の噛む面にある凹凸は、上下で互いがしっかりと噛み合うように出来ています。
 口全体の型を取って模型を作り、上下に噛み合った状態を左右の側面(横)から見ると、多少暖い弧を描いた整った平面に見えます。
 もしも、1本でも歯を失うと、馬蹄形をしている歯列(歯並び)は連続性を失い、その結果、互いに寄り添って接触し、バランスを保っていた歯列(歯並び)は厳密さを失い、隣接する歯と歯の接触がゆるくなります。
 つまり、歯が歯を失った方向に動いてしまうのです。
 動いた歯と歯の間には、食べカスなどが挟まりやすく、停滞しやすいすき間となって、ムシ歯や歯周病の原因なります。
 さらに歯は、前後左右に動くだけではありません。悪い条件が重なれば上下にも動き始めます。
 こうなると、上下の噛み合わせにも乱れが生じてきます。
 そのために、食物を噛み砕く時に歯にかかる力にも不均衡が生じます。
 歯を失った後の食事の取り方には注意が必要となります。
 食べるという欲求は、当然毎日起こります。
 食べることは人間にとっては本能です。
 最も能率のよい食べ方は、自然と体が学習しています。
 例えば、右側の歯がムシ歯や歯周病などで痛い時は、自然と左側の歯を使って噛んでいます。
 同じように、歯を失った側は噛みにくいので、歯の揃っている反対側で噛むようになります。
 これは、噛みやすい側を顎(あご)が判断しているのです。
 したがって、歯を失う度に、噛み合わせする側(咀嚼側)が変化し、噛む力も噛みやすい側に編ってきます。
 さらに歯を失うと、最後には顎を動かしながら最も食べやすい場所を探すようになります。  
 このような動作を長年続けると、顎の関節も影響を受けて、最終的には下顎(あご)の位置がずれて、外見的にも顔の形が変形してきます。
 多くの人は、自分がよく噛んでいるのは右側なのか左側なのかに気がついていますが、一変よく噛んでいる側の歯を失うと大変な不便を感じます。 噛みにくくなったこと、食べ物がこぼれる、だ液が漏れるといった不満を感じ始めます。
 一方、噛むことしなくなくなった側の歯には、自浄作用が低下して、食べカスが溜まりやすくなります。
 さらに、前歯を失うと、外見が悪くなるばかりか発音もしにくなり、顔の見えない電話などでは、他の人ではないかと疑われるたり、聞き取りにくいといわれることもあります。
 健康であるということは、生ある限り口から食べ物をとり、自分の歯でしっかり噛み、だ液に含まれるさまざまな酵素と反応させ、それを胃へ送り込むことで健全な栄養補給が続けられます。
 健康で長生きするためには、多くの歯が揃っていることが根源的な条件と言えます。