お口のにおい、気になりませんか?
平成29年5月29日(月) 掲載
お口のにおい」。
自分では気付きにくいだけに「迷惑をかけてないかなあ」と、心配される方も多いのではないでしょうか?
この「におい」の正体は、口の中にいる細菌がタンパク質を分解して作る揮発性の硫黄化合物です。
自分の体内で作られ、しかも四六時中嗅いでいると慣れてしまうので、においを撒き散らしている当の本人は気付かないことが多く、その一方で、他人の口臭には慣れていないために、気になることが多いのです。
自分の感覚があてにならず、「自分もひょっとして口臭があるのでは?」と内心気にしている方も多いはずです。
口臭には、「生理的口臭」と「病的口臭」の2つがあります。 「生理的口臭」は、朝起きた時や、風邪を引いて寝込んだときなどに起こる誰にでもある硫黄のようなにおいです。
健康な人でも発生するものなので、心配することはありませんが、少ないに越したことはありません。
朝ご飯を食べたり、歯みがきをすれば、気にならなくなる程度のもので、この正体は主に硫化水素です。
一方、「病的口臭」は、「魚が腐ったようなにおい」「玉ねぎが腐ったようなにおい」などと例えられるような強烈なにおいを含みます。
そばにいるだけで我慢しなければならないほどで、「腐敗臭」と呼ばれ、この正体は主に、体の中のタンパク質が細菌によって分解されて発生する有毒ガス「メチルメルカプタン」です。
口臭に含まれるのは微量で、空気中に拡散するため、命に別状はありませんが、このガスが血管に入って体内を巡ることにより、細胞を傷つけ、体に悪さをすることが判ってきました。
更に口臭は、人間関係やビジネスにも悪影響を及ぼします。
病的口臭ともなると、これは完全に治療の対象です。
蓄膿症や扁桃腺などの耳鼻咽喉科系の病気が原因することもありますが、ごく稀なので、まずは歯科医院で歯周病になっていないか確認してください。
歯周病は、歯と歯グキのすき間(歯周ポケット)に隠れた歯周病菌が炎症を起こす病気で、その症状が進行すると、歯周病菌が歯グキのタンパク質を分解して栄養源にする時に発生する強烈なにおいが「口臭」の原因となります。
「胃が悪いと口がにおう」と昔から云われていましたが、これはまったくの俗説です。
胃と口の間には食道があり、ふだんは胃液が逆流しないように閉鎖していて、健康であればにおいは口まで上がってきません。
例外的に胃のにおいが口まで上がってくるとすれば、それは「ゲップ」で、もしも日常的に胃のにおいが口へと上がってくるようならば、口臭どころか胃液が食道に逆流してただれ、つらい症状に悩まされますし、よほど進行した胃がんや肝臓病であれば、口臭の原因となる可能性があります。
その場合は、内臓疾患の治療を優先することになるはずです。
歯周病からくる口臭では、多くの歯周病菌が、水分(だ液)・温度(体温)・栄養素(プラーク)によって培養され、舌苔(ぜったい/舌の上の汚れ)も増え、歯周ポケット自体が歯周病菌にとって居心地のよい棲み家となり、炎症によって死んだ細胞などのタンパク質をさかんに分解され、口臭を発生し続けます。
ミントのタブレットを噛んでも、根本的に口臭がなくなるわけもなく、単なる気休めにしかなりません。
口臭を改善するためには、まず歯周病の治療を始めることです。
歯周ポケットに溜まった歯石やプラ-クを取り除き、舌苔を減らして、歯周病菌が減少すれば、においの原因であるメチルメルカプタンが発生しなくなり、口臭も少なくなってきます。
まずは「歯周病の治療」を確実に行い、そして治療後の良好な状態を維持していくことが「口臭」をなくす近道です。