初めて義歯(あご付きの入れ歯)を使われる方へのメッセージ

平成29年11月6日(月) 掲載

何らかの原因によって歯を失うと、多くの方は『歳を取った』と感じます。  
 さらに、お口の中に異物である義歯(入れ歯)を入れるとなると、なおのこと ガックリきます。 このように、義歯(入れ歯)に対するイメージはマイナスから始まり、どんなに良い義歯(入れ歯)でも、気持ちの上で受け入れることが難しいと思います。
 歯がなくなると、息が漏れてうまく話せなくなり、食べられなくなり、頬や唇がくぼむことで顔貌(見た目)に変化がおこります。義歯(入れ歯)の役割は、お口の機能(食べる・しゃべる・見た目など)を回復し、顔面の形態変化や歯を失うことによる弊害を予防する目的で使われます。患者さんに合うように様々な行程を経て作製しても、人工物をそのまま患者さんのお口の中にいれただけでは機能することは難しく、使用しながらの調整や患者さん自身がうまく使えるように訓練(リハビリ)することも必要です。すなわち、歯があった時には歯で支えていた咬む力も、義歯の下にある柔らかい歯グキに負担をかけていかないと、しっかりと力が伝わらず食べ物がこなれません。また、歯グキは義歯(入れ歯)に圧迫されて、痛むことがしばしばあります。
 初めての義歯は大抵部分入れ歯でしょうから、話したり食べたりする時に義歯(入れ歯)がはずれないよう残っている歯にバネをかけ、そのバネの金属色がキラリと光ります。 例え義歯(入れ歯)なしで食べられたとしても、義歯(入れ歯)をいれないと歯が抜けている部分のすぐ隣の歯が倒れ込んだり、噛んでいた相手の歯が伸びて(延出)きたりして、抜けた歯の空間を埋めようとします。そのため、歯の並びが悪くなり、歯ブラシでうまく磨けなくなり、ムシ歯や歯周病を引き起こす原因になります。
 義歯(入れ歯)をいれている意味と義歯(入れ歯)で出来ることを理解した上で、上手に付き合っていこうとする気持ちがあれば、義歯(入れ歯)もうまく使いこなせるようになります。訓練方法としては、摂食訓練と発声訓練があります。
 摂食訓練は、食品を柔らかく、細切れに調理し、食べるときにはゆっくりと時間をかけて噛むことが効果的です。発声は上あごに舌を押しつける形により音を作っているので、義歯(入れ歯)の形を舌が覚える必要があります。そのため、新聞や本などは声を出して読み、発声の機会を増やすことが効果的です。
 また、義歯(入れ歯)の形を微調整することで修正できることもあり、どんな言葉が話しづらいかなど、歯科医師に相談していただけると良いかと思います。そして、義歯(入れ歯)のお手入れをすることで、残っている歯も守ることができます。
 義歯(入れ歯)はプラスティックの高分子化合物で出来ていますので、目に見えない凹みが沢山あり、そこに細菌や汚れが入り込みます。義歯ブラシや歯ブラシで表面の大きな汚れをこすり落とした後に、義歯洗浄剤による洗浄が効果的です。バネの変形も過剰な力が歯に加わる原因になります。
 義歯(入れ歯)の取り外しは十分に注意して行い、噛む力による変形もあるので、定期的な診察も必要です。 義歯(入れ歯)のすぐ隣の歯は汚れが溜まりやすく、バネがかかっている歯は更に注意が必要です。しっかり歯ブラシをかけて清潔にして下さい。
 最後に、今まで義歯(入れ歯)の不便さについて述べてきましたが、義歯(入れ歯)を嫌って闇雲に歯を残すことは、かえって顎の骨を痩せさせる原因となり、合わない義歯(入れ歯)に繋がります。義歯(入れ歯)人生を快適に過ごすためには、定期的な診察で継続的にお口の状態をチェックし、ダメな歯は諦めて抜くなどのタイミングも肝心です。 必ず、かかりつけの歯科医院でよく相談して下さい。