全身の健康とお口の健康の深い関係
その1 歯科衛生士ができる認知症対策

令和2年7月6日(月) 掲載

最近の研究において,認知機能の低下・認知症の発症と口腔健康状態との間に関連性があることが分かってきました。つまりお口の健康を維持することが認知機能の低下や認知症の発症の予防に繋がるということです。
 したがって若年者のうちからお口の病気の予防、早期発見・早期治療による歯の喪失予防、喪失した歯をきちんと補うこと等を心がけることが大切です。ここで重要なのはかかりつけの歯科医院を持ち定期的に健診を受けることです。お口の健康は一朝一夕に獲得できるものではありません。かかりつけ歯科医や歯科衛生士は長期にわたり一人ひとりの患者さんと付き合うことが可能です。したがって,患者さん自身が気づかないような認知症の初期症状を早期に発見することも可能かと思います。
 それでは、なぜお口の健康が認知症と関係するのでしょうか?以下のような理由が考えられます。
1.歯周病などの持続的感染症は全身に波及し,アルツハイマー型認知症と関連することが報告されています。
2.生活習慣病(高血圧,糖尿病,脂質異常症等)も認知症の発症を促進する重要な因子となっていて、歯周病の関連も指摘されています。
3.認知症患者には広く低栄養を認めること、認知症の発症や進行には低栄養や微量栄養素の欠乏が影響することが示唆されています。お口の健康が損なわれること(オーラルフレイル)が低栄養の大きな原因となります。
4.お口への刺激、および食物を咀嚼する運動は脳を活性化させます。たとえ寝たきりの患者さんでも咀嚼機能を改善させたり、口腔ケアでの刺激で間接的にアルツハイマー型認知症は予防できると考えられています。
5.口腔の健康への認識が高いと活動能力の維持にも繋がり,社会と関わる機会となる外出なども積極的に行えるようになるといわれています。 人が歯を失う原因になる2大疾患はむし歯と歯周病ですが、歯科衛生士が行う歯石の除去やフッ素の塗布などの予防処置と歯科保健指導がこの2大疾患の重症化にストップをかけ歯の保存に大きく寄与していることは間違いありません。即ち歯科衛生士の業務が認知症予防に大きく貢献していると言っても良いでしょう。
 20本の永久歯があればあまり食生活に不自由なく生活できるという観点から平成元年より「8020運動」というキャンペーンが始まりました。今や80歳以上で20本以上の歯が残っている人は50%以上いらっしゃいます。歯科医師や歯科衛生士の努力の賜物だと思っています。このようにお口の健康のみならず全身の健康に貢献できる歯科衛生士という職業はとてもやりがいがあります。興味を持ち志望する方はぜひ豊橋歯科衛生士専門学校にご連絡ください。校内の見学も随時受け付けております。