全身の健康とお口の健康の深い関係
その3 歯科衛生士ができる循環器病対策

令和2年7月27日(月) 掲載

今回は循環器病と歯周病の関係についてご説明したいと思います。循環器病の原因となるアテローム性動脈硬化症(コレステロールなどの脂質が動脈内膜に粥状に沈着した動脈硬化)が、歯周病と関連することがわかってきました。アテローム性動脈硬化が起きている部分から歯周病菌が検出されたという結果も報告されています。ご存じのように動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす命に係わる恐ろしい病変です。歯周病にかかっている人はそうでない人に比べ2倍以上も循環器病を発症しやすいこともわかっています
 日本の成人の8割以上がかかっている「口の生活習慣病」とも言える歯周病ですが、原因は歯に付いた歯垢です。歯垢の中には歯周病の原因菌も含まれます。この細菌は歯肉に炎症を起こし、歯を支えている骨を溶かして歯の周囲の組織(歯周組織)の破壊が進行します。予防や治療で重要なことは歯垢をブラッシングで取り除くこと(プラークコントロール)と定期的な歯石の除去(スケーリング)などのメンテナンスです。
 歯周病が循環器病に影響するメカニズムは、歯周病菌が直接血管に障害を与える作用に加え、炎症の起きた歯周組織で作られる化学物質が血流により心臓や血管に移動し、心臓血管系の異常を引き起こすのではないかと考えられています。
 歯周病治療の基本ともいえるプラークコントロールの指導やスケーリングを担当する口腔衛生のスペシャリスト、歯科衛生士はまさに循環器病患者さんにとっても強い味方と言えるでしょう。
 また歯周病治療に限らず循環器病の患者さんが歯科治療を受ける際、ストレスなどにより一時的に血圧が上がりやすくなります。また、痛みを取るための局所麻酔薬の作用で、血圧が上がることもありますので血圧のコントロールされていない患者さんは注意が必要です。さらには、出血を伴う処置の場合、血栓予防のためにワルファリンなどの抗凝固薬やアスピリンなどの抗血小板薬を服用している患者さんは、止血がしにくい場合が考えられます。最新の治療ガイドラインでは、血栓予防薬の服用は中止せず処置することが原則ですので、決して自己判断で服薬を中止することの無いようにお願いいたします。歯科治療によって血液中に細菌が入り込むことがあり、心臓弁の異常が有ったり人工弁に取り換える手術を受けた患者さんでは、感染性心内膜炎を発症するリスクが高まると考えられており、治療前の抗生物質服用など、感染予防が必要な場合があります。いずれのケースも必ず歯科治療前に歯科医師・歯科衛生士にご相談ください。
 以上のように歯科衛生士という職業が循環器病の予防においても重要な役割を占めていることがご理解いただけたことと思います。お口の健康だけでなく全身の健康にも関わる歯科衛生士という職業はとてもやりがいがあり社会的にも貢献できる職業です。歯科衛生士に興味を持ち、志望する方はぜひ豊橋歯科衛生士専門学校までご連絡ください。校内の見学も随時受け付けております。