矯正治療における抜歯

令和3年8月2日(月) 掲載

有名なタレントやスポーツ選手が矯正装置を着けてテレビ出演している姿を見かけることが増えてきました。
 一昔前のように、健康な歯を削ったり、抜いたりして人工の歯に代えることが少なくなってきているようです。
 これは、天然の歯や安定した噛み合わせの重要性が広く認知されるようになってきた結果だと思います。
 こうした背景も後押して、矯正治療を希望する成人の方が増えてきています。
 しかし、まだまだ治療期間、費用などの面で矯正治療を躊躇する方もいらっしゃいます。
 また、矯正治療をする上で、歯を抜くことに抵抗感を抱く方もみえます。
 もちろん矯正歯科医であれば、先ず歯を抜かずに治療することを検討します。
 しかし残念ながら、口もとや骨格のバランスを考えると、何割かは抜歯を行 う必要が出てきます。
 特に顎の骨の成長が完了している成人の方は、その割合が増えます。
 重要なのは、決して歯並びの凸凹のみで抜歯を決める訳ではなく、骨格との関係、口もとの突出感、機能的なバランスなどを考慮して判断します。
 そもそも日本人の場合、歯が大きく、あごの奥行きが十分にないので、無理をして歯を抜かずに並べると、さらなる口もとの突出を招いたり、奥歯がきちんと生える場所が足りなくなったりして、審美(見栄え)的にも機能的にも無理が出てきてしまうことがあります。
 それに対して白人の骨格は、鼻が高く、彫りの深い顔立ちで、あごに奥行きがあり、歯を抜かずに治療可能な場合が多いのです。
 つまり日本人は、他の人種に比べて難症例なのですが、全ての症例で抜歯をしなければならない訳ではありません。
 レントゲン(X線)、模型等の資料を分析し、的確な診断を行うことにより、歯を抜かずに治療が出来る可能性は広がります。
 歯の並びだけで判断し治療を行うことは、例えると設計図を描かずに家を建てる様なものです。
 歯を抜くのが悪い訳ではありませんが、無用な抜歯はしたくありません。
 矯正治療を行う際には、自分のお口の中をしっかり確認して、診査(検査)結果の説明と診断を聞き、ご自身で納得してから安心して治療に臨んでいただければと思います。