歯のQ&A

平成27年9月10日(木) 東日新聞掲載

最近、口の中に渇きを感じ食事がしにくくなりました。水やお茶を飲んでも一時的によくなりますが、すぐに苦になってしまいます。どうしたらよいのでしょうか?
(60代女性、主婦=蒲郡市)

[回答者]
豊橋市歯科医師会 清水 泰 先生
 発熱や運動で脱水状態になると口腔乾燥状態になりますが、水分補給で改善されます。様々な原因で唾液の分泌量が低下し、口の中が乾燥する病気を口腔乾燥症(ドライマウス)といい、対応が異なります。
 原因として、糖尿病、甲状腺機能異常などの内科疾患に続発する場合、がん治療において頭頸部の放射線照射による唾液腺障害に伴う場合、ストレス、神経症などの精神的要因、加齢、口呼吸などが挙げられます。薬物性口腔乾燥症の原因には、抗うつ薬、抗不安薬などの向精神薬、高血圧症、心不全などに用いる利尿薬、狭心症、高血圧などに用いるカルシウム拮抗薬、その他にも多くの種類があります。唾液腺疾患によるものには、全身性の自己免疫疾患であるシェーグレン症候群、唾液腺炎、唾液腺腫瘍などがあります。
 特に薬物性口腔乾燥症の問題点として、抗うつ薬、抗不安薬などの向精神薬は長期にわたり投与されることが多く、これにより口腔乾燥症を起こしやすくなります。高血圧症などの内科疾患では多種類の薬剤を処方される場合が多く、原因となる薬物は一つとは限らず、相乗的に副作用が誘発されます。  とりわけ高齢者においては、身体生理機能の低下に薬物の副作用が加わるので発症しやすくなります。口腔乾燥症は、直接生命に関わるわけではないので軽視されがちです。医科と歯科の連携により副作用の少ない薬剤への変更や減量、投薬の必要性を再検討してもらう必要性もあります。
 治療法として、唾液の分泌を促進するために、耳下腺、顎下腺、舌下腺に対して行う唾液腺マッサージ、舌体操などは効果があります。口腔乾燥症の治療薬には、唾液分泌を促進し、口渇感を軽減するために使用される催唾剤(塩酸セビメリン水和物、塩酸ピロカルピン)、漢方薬などが挙げられます。また、唾液の不足を補うためのものとして、人工唾液(噴霧式エアゾール剤)、リンス・洗口剤、トローチ剤・保湿ゲルなどが使用されます。

過去に掲載された「歯のQ&A」や歯の関する情報は、豊橋市歯科医師会公式ホームページ「ミラー」でご覧い ただけます。
URL http://www.tda8020.org/