歯のQ&A

平成27年9月29日(火) 東日新聞掲載

歯医者に行って治療してもらっている時にむせたり咳き込んだりしてしまいます。普段の食事でも同様なことが起きることがあります。何か改善策はあるのでしょうか?
(70代男性、無職=豊川市)

[回答者]
豊橋市歯科医師会 清水 泰 先生
 食事中のむせや咳は、摂食・嚥下(せっしょく・えんげ)障害が疑われる症状の一つです。摂食・嚥下障害とは、食べること、飲み込むことの障害で、上手く食べられない、飲み込めない状態をいいます。異物を誤って飲み込んでしまい、それが食道に入ってしまうことを誤飲(ごいん)といい、食物や唾液を飲み込んだときに、通常は食道へ行くはずのものが誤って気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といいます。一般的には少量でも食物が気管へ入れば、むせ込んで吐き出そうとします。むせは、異物を吐き出そうとする生体防御反応が働いていることを示しています。逆に誤嚥してもむせを生じないことの方が誤嚥性肺炎や窒息のリスクが高いので注意が必要です。
 摂食・嚥下障害の原因には、顎形態の異常、歯列咬合の不正、口腔・咽頭領域の手術による解剖学的欠損、脳性麻痺、脳血管障害、認知症、パーキンソン病、筋ジストロフィー、筋委縮性側索硬化症、多発性硬化症、加齢による機能減退、内服薬の問題などが挙げられます。
 摂食・嚥下障害のスクリーニング検査(障害を推定する検査)には、反復唾液嚥下テスト、水飲みテスト、頸部聴診法などがあります。このうち反復唾液嚥下テストは、三十秒間に唾液を何回飲み込むことができるかを調べますので、比較的簡単にセルフチェックできます。高齢者では三回以上が正常の目安となります。
 摂食・嚥下障害に対して口腔ケアは非常に大切です。口腔ケアにより、口腔・咽頭の細菌を減少させ、口腔内の感覚が改善し、口腔・咽頭の運動機能が回復することで誤嚥する可能性を低減させることができ、誤嚥性肺炎の予防にも大きな効果があります。
 成人における摂食・嚥下障害の対応について、原因により障害前の嚥下機能を取り戻すこと、あるいは現状を維持することが目標になります。機能訓練法として、舌の抵抗運動訓練、頭部挙上訓練、嚥下法訓練など、食べ物の流れを調整し症状を改善させる方法として、姿勢調節法、嚥下調整食、嚥下補助装置などがあります。尚、豊橋市主催の「お口から若返り教室」において歯科医師講話および歯科衛生士による嚥下機能訓練の実技指導を行っています。

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