歯のQ&A

平成27年11月10日(火) 東日新聞掲載

口の中に痛みを感じて近所の歯医者に行ったのですが「異常はない」と言われました。いつもではないのですが、口の中の色々な所がピリピリ・チクチクするのが気になります。こういう事は、よくあることなのでしょうか?
(60代女性、主婦=蒲郡市)

[回答者]
豊橋市歯科医師会 竹尾 明先生
 口の中にはむし歯や歯周病のように原因がはっきりした痛み以外にもさまざまな痛みがあり、なかには原因が特定しにくいものがあります。
 そのため、歯科のみならず、どこの医療機関を受診しても「異常ない」「神経質なのではないか」などと取り合ってもらえないことがしばしばあります。他の部位に比べて、口の痛みがつづくと独特のつらさがあります。家族や親しい友人にも理解してもらえず、「これだけ医学が進歩したのに」「自分だけこんな病気になってしまった」と一人で思い悩んでおられる患者さんも随分多いようです。
 検査や他覚的には何の異常も認められないにもかかわらず、舌がやけどをしたような、あるいは歯にこすれるようなヒリヒリ、ピリピリした痛みや灼熱感が何カ月も何年もつづく「舌痛症」という病気があります。痛む部位が移動することがあり、上下の唇や口蓋(上あごの粘膜)までピリピリ痛むこともあります。口の中が乾く、ザラザラした感じや味覚の変化(おいしくない、本来の味がしないなど)をしばしば伴います。
 このような症状は、40~50歳台の中高年の女性に多いとされていますが、80歳以上の女性や30歳台の男性でも発症することがあります。症状には波があり、起床直後や午前中は比較的落ち着いていますが、夕方や夜にかけてひどく痛むことが多いようです。不思議なことに、この痛みは食事中や会話中などはあまり支障がなく、何かに熱中しているあいだは痛みを忘れる場合もあります。典型的には、この痛みは我慢できないほどではありませんが、1日中気になり、舌に神経が集中している感じです。また不眠や頭痛など自律神経症状を伴うことがしばしばあります。この病気に罹るのは、もともと真面目で几帳面な性格の人が多い印象があります。あまりに長いあいだ痛みがつづくため、舌ガンではないかと心配される患者さんも多いのですが、この病気からガンになることはありません、その点はご安心下さい。

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