歯のQ&A

平成29年7月6日(木) 東日新聞掲載

歯茎が下がってきたり、歯が少しグラグラしてきたので、歯医者に行ったら、歯周病だと言われました。治療はもちろん必要だが、タバコをやめるように言われました。歯で禁煙は理解できません。なぜ歯が悪くて禁煙した方がいいのでしょうか?
(40代男性、会社員=豊橋市)

[回答者]
豊橋市歯科医師会  副会長 松井 和博
 歯周病は歯茎の病気で、初期の段階では歯を磨くと歯茎から血が出るようになってしまいます。そしてそのまま進行していきますと、歯を支えている歯槽骨という顎の骨がダメージを受けて吸収されて下がっていきます。そうしますと歯茎も下がってしまい、また支えている顎の骨が少なくなるために歯もグラグラしてきます。最終的には噛むと痛い、歯がグラグラして噛めなくなる、歯茎が腫れる、等の不快症状が出て自然に抜け落ちたり、場合によっては歯医者さんで抜かなくてはならなくなったりします。
 ところで何故歯周病になると、歯茎が腫れたり、骨が溶けたりするのかご存じですか?
 人間の体には優れた免疫という細菌などの外敵から体を守る防御システムがあります。外から細菌が体内に侵入してきた場合、すぐに白血球が細菌の駆除に駆けつけます。またその駆除した細菌が今度入ってきてもすぐに体を防衛するように記憶するリンパ球があります。その為新たに細菌が体内に侵入してきたとしてもすぐに体の防御システムで駆除ができるようになるのです。ところが防御のためには細菌と戦う場所と防衛するための援軍が必要になります。細菌の侵入部位に多くの白血球が送り込まれるように骨を溶かし、除去して血管を新たに作って防戦体制を作ります。それが炎症と言われる、メカニズムです。その結果歯茎を支える骨が溶けて、歯茎から刺激で血が出やすくなるのです。
 一方タバコを吸うと、その成分であるニコチンが体の血管を収縮させてしまいます。そのため歯茎に細菌が侵入してきても血管が喫煙で収縮してしまうため、効率よく防御のための白血球などが送り込むことができなくなります。結果的に歯周病が進行してしまうのです。
 ですので、禁煙することにより歯茎の正しい防御のメカニズムを取り戻すことが可能となるのです。 またニコチンは歯周病以外にも体に悪影響をおよぼすことが知られています。この際禁煙されて、健康な体と歯茎を取り戻してはいかがでしょうか? ご不明なことがありましたら、かかりつけ、もしくはご近所の歯科医院で相談されることをお勧めします。
 ご家庭での対応でも効果がみられない場合は、かかりつけまたはお近くの歯科医院で相談されることをお勧めします。


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