歯のQ&A

平成29年7月26日(水) 東日新聞掲載

3歳2ヶ月の娘のことです。転居して初めて近所の歯医者さんに診て頂いた時、『舌の下のスジがしっかりしすぎている。切らないと発語に影響があるから切った方がいい』と言われました。今まで通っていた歯医者の先生には言われたことがなかったですし、特に今、娘の発語がおかしいとも思えません。それでも切った方がよいのでしょうか
(30代女性、会社員=豊橋市)

[回答者]
豊橋市歯科医師会  専務理事 松山 明敬
 舌の下の筋は舌小帯と言いますが、質問から察しますとたぶん舌小帯が少しばかり他のお子さんに比べて太くなっていると思われます。舌小帯とは、舌の下から下あごの歯茎の内側に連続している索状のひだのことを言います。舌小帯の異常は舌小帯強直症が主であり、小帯の短縮、あるいは小帯(ひだ)が舌の先から下あごの舌側から歯茎まで接近して付着している場合をいい、舌小帯短縮症あるいは、舌癒着症などと言われます。その程度は様々で、多くの場合、小帯によって舌の先が下あごの舌側の歯茎の辺に固定された状態で見られます。
 本症は先天性と後天性に分けられますが今回のケースでは胎生早期における舌発育過程の残遺像として考えられますが、さらに出生後における舌の発育と舌小帯の退縮との不調和が加わってできたものと考えられます。
 舌小帯短縮症の程度の分類として、十分にお口を開けた状態(最大開口)で、上あごの前歯の裏に舌の先を接触させたときに、舌の先の挙上量が最大開口量の半分以上の場合を軽度と言います。それに加え、最大開口量の半分から、かみ合わせの面までの位置に達する場合を中等度、さらに重度の場合は、かみ合わせの面まで達しない場合としています。重度の場合には、その特徴的な所見として、舌を前方に突出した時に、舌の先がハート状にくびれます。
この舌小帯短縮症の機能障害としましては、哺乳障害や構音障害などがあげられます。また食べるのが遅く摂食・嚥下障害をきたすことがあります。歯並びにも影響をきたすことがあります。発音の問題としては、サ行・タ行・ラ行音に構音障害をきたすことがあります。こうした障害がみられた時には、外科的治療が必要となる場合があります。ただ、気付かれていないだけで、専門家が診れば症状が出ているケースもありますので、詳しくは歯科医院等で相談された方がよろしいかと思います。


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