歯のQ&A

令和元年8月22日(木) 東日新聞掲載

歯医者に行って治療の時にむせたり、せき込んだりしてしまいます。普段の食事の時にも同じようなことが起きることがあります。何か良い改善策はあるのでしょうか?
(70代男性、無職)

[回答者]
豊橋市歯科医師会・羽田野敬彦
 水分や食物を飲み込み食道を介して胃に送り込むことを「嚥下(えんげ)」といいますが、この働きのどこかに問題が出てきていると思います。
 普通は口から水分や食物を嚥下する時は喉にある様々な筋肉が連携し食道に送り込まれますが、筋肉の連携がうまくいかないと食物や水分が気管に誤って入ってしまい「誤嚥(ごえん)」が起こります。
 誤嚥した場合は身体の反射ですぐにむせやせき込みが起こり、誤嚥された食物や水分は気管から排出されます。しかし、誤嚥が起こった際に食物や水分が上手に排出されないと気管の下には肺があるため、肺に炎症が起こり「誤嚥性肺炎」が起こります。高齢者の肺炎の7割が誤嚥性肺炎と言われており、特に注意が必要です。
 従いまして、ご質問の状況は明らかに誤嚥を起こしている状態と思われます。今後誤嚥性肺炎になる可能性も出てきますので要注意です。
 改善策としてはまずは誤嚥をなるべく減らすことが大切です。
 歯科での治療に対しては治療時の姿勢を(通常は水平に寝た姿勢で行うことが多いですか)少し椅子の背板を起こしかつ頭部をなるべくのけぞらないようにする事が必要です。また治療時に器具から出てくる水の量を加減してもらう事も考慮する必要があると思います。一度担当歯科医師とご相談ください。
 食事時の改善としましては、嚥下に際して使用する喉の筋肉をまず鍛える(口、舌、喉の筋肉のトレーニングする)ことで誤嚥を防ぐことができます。また要介護の方であれば定期的に口腔ケア(口の中をスポンジブラシで掃除すること)をすることにより、口の中に刺激が入り嚥下に際しての筋肉の連携が良くなり、誤嚥を防げるとも言われております。
 誤嚥にはいろいろな原因があります。
 いずれにしろ喉の筋肉を鍛えてもむせたりせき込みが改善しない方は、一度嚥下機能の検査(反復嚥下テスト、嚥下内視鏡や嚥下造影など)をして原因を特定する必要があると思いますので一度担当歯科医師にご相談ください。