歯のQ&A

令和2年9月18日(金) 東日新聞掲載

朝起きた時、子供の口が臭いのですが、どうすれば良いですか
(30代女性 母)

[回答者]
豊橋市歯科医師会厚生部・村田起一
 よく保護者の方から、〝お子さんの口臭が気になる〟とご相談をお受けします。一口に口臭と言いましても、その要因は一つではありませんので、まず一般的にお子さんに口臭を引き起こす可能性のある要因を挙げてみます。
 ①口腔内細菌の繁殖による口臭  
 1、生理的口臭  
 誰にでもある臭いとして、起床直後(起床時口臭)、空腹時(飢餓口臭)、緊張時(緊張時口臭)があり、これらの時は特に口臭は強まります。これは唾液(だえき)の分泌が減少し、ミュータンス菌が増殖して口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)がたくさん作られるためです。歯みがきで細菌やVSCが減少し、食事をすると唾液が増加します。また、水分を積極的に補給することでも急激に口臭は弱まります。
 2、口呼吸  
 最近お子さんによく見られる口呼吸は、唾液が減少し自浄作用が働かず汚れがついたままの状態になります。しかも口腔内を乾燥させますので、菌が繁殖するのには絶好の環境になっており、口呼吸のお子さんは口臭が強い傾向にあります。口の中は唾液で潤っていることで〝恒常性維持機能〟〝免疫〟〝自浄性〟などを保ちます。口呼吸を改善するには、日常生活の中で、食事の際は口をきちっと閉じて噛(か)む習慣をつけたり、鼻で深呼吸をしてみたり、1日数回短時間ずつでも、毎日声をかけることで改善していくケースもあります。心配な場合は、小児口腔機能に対応している歯科医院に相談してみましょう。なお、慢性的な鼻閉により口呼吸になっている場合には耳鼻咽喉科受診をお勧め致します。
 3、口腔内環境の不良  
 う蝕、歯垢(しこう)、歯石、舌苔等により口腔内細菌は繁殖し、口臭の要因となります。お子さんの場合、保護者の毎日の丁寧な口腔ケアの習慣が必須なのは言うまでもありません。また、参考までに成人では加えて歯周病も口臭の大きな要因となります。
 ②口腔内以外の原因による口臭  
 1、扁桃炎  
 扁桃には、口蓋扁桃(口の奥左右)、アデノイド(鼻腔奥の部分と、喉の間)、耳管周囲扁桃(耳管周囲)、舌扁桃(舌の付け根)があります。扁桃が、細菌等の感染により炎症を起こしたものが扁桃炎です。扁桃は赤く腫れ、しばしば白い膿を持ち、とても強い臭いを放ちます。そこを通った空気が呼吸の度に吐き出されるため、口臭となります。
 参考までに、扁桃が大きくなる事を扁桃肥大と言いますが、これは4、5歳頃がピークになります。主に口蓋扁桃とアデノイドの肥大が原因で、睡眠時無呼吸になる事も少なくありません。睡眠時の酸素供給不足により、発育に対し様々な悪影響を及ぼします。お子さんのイビキ、眠りの浅さ等が気になる方は、まず歯科や耳鼻咽喉科にご相談頂き、睡眠外来を紹介してもらうのも一つの方法です。なお、扁桃炎の処置は耳鼻咽喉科になります。  
 2、鼻炎・蓄膿症(慢性副鼻腔炎)  
 アレルギー性鼻炎・急性副鼻腔炎・蓄膿症などの場合は鼻の奥からの臭いを感じます。
 急性副鼻腔炎になり鼻閉が続くと、鼻の奥に膿が溜まる蓄膿症になってしまいますので放置しない事が肝要です。また、鼻炎や蓄膿症がある場合、鼻閉により口呼吸となりやすいので、お子さんが口を開いている場合、最初から癖だと決めつけずに鼻閉のチェックもしてあげて下さい。
 3、全身状態  
 風邪・発熱では口腔内の温度が上昇し唾液の分泌が抑制されます。更に免疫機能が低下し、口内に雑菌が繁殖しやすくなり口臭がきつくなりやすいです。  
 また、下痢や便秘でも口臭は起こる事が分かっています。  
 ご質問は、お子さんの口臭が朝起きた時に気になる、という事ですので、通常は生理的口臭という判断になりやすいですが、その他の要因が背景にある場合は、適切な治療が先ず必要になります。