歯のQ&A

令和4年9月8日(木) 東日新聞掲載

取り外しの入れ歯を初めて作ってもらいました。歯科医院で定期的にチェックしてくれますが、自宅でもお手入れをしてくださいと歯医者さんから言われました。入れ歯の手入れでやったほうがいいこと、やってはいけないことを具体的に教えていただけますか?
(60代男性)

[回答者]
豊橋市歯科医師会・町田和香奈
 初めての入れ歯には慣れましたか?入れ歯の調整が終わり、使いやすくなってきた頃でしょうか?入れ歯は患者さん自身が慣れるための努力と、歯科医師による調整という相互の協力により実際に使えるものへと育っていきます。
 ご質問のとおり、これから大切になるのがご自宅での入れ歯のお手入れです。入れ歯には大きく分けて、部分入れ歯と総入れ歯があります。一般的に部分入れ歯は残っている自分の歯があり、バネなどの金具、床、人工歯からなります。総入れ歯は自分の歯がなくて床と人工歯からなります。部分入れ歯の方が構造は複雑で、少し取り扱いが難しいかもしれません。
 入れ歯には目に見えない菌が付着しています。デンチャープラークと呼ばれ、虫歯、歯周病、口内炎、舌炎の原因となり全身にも影響することがあります。また、菌が入れ歯の素材を劣化させることもあります。お手入れですが、まず入れ歯を落下させないように手のひらで包み込むようにして持ちます。そして流水下で入れ歯用ブラシを用いて、食べカスやデンチャープラークをとります。普通の歯みがき粉で磨くと、含まれている研磨剤で入れ歯にキズがついてしまうのでやめましょう。汚れのつきやすい部位は内側の粘膜面、歯と歯(人工歯)の間、金具の部位です。金具の部分は曲げたりしないように取り扱いには注意してください。 次にブラシの届きにくい複雑で細かいところは義歯洗浄剤を使います。デンチャープラークの増殖を抑え清潔に保ってくれます。できるだけ毎日使うと良いでしょう。入れ歯の洗浄剤にはいろいろ種類があります。殺菌作用、歯石除去作用、消臭作用などがあります。高い洗浄力のものは入れ歯の材料に変化や変色を起こすことがあります。入れ歯に使用されている金属や素材がわからない場合は、広範囲に使うことのできる中性の洗浄剤を第一選択とします。歯科医院や薬局で相談するのもいいでしょう。洗浄後は水でよくすすぎ、ぬめりをチェックしてください。
 やってはいけないことは、熱湯消毒と長時間乾燥した状態にしないことです。取り外した入れ歯はティッシュペーパーなどに包まず、自分専用の容器に水を入れて保管してください。できる限り食後は入れ歯をはずして、食べカスを取り除きます。また。残っている自分の歯をブラッシングすることもとても大切です。
 最後に、今はよく噛(か)めてもお口の状態は自然に少しずつ変わっていきます。あごの骨がやせたり、頬の筋肉がやせたりすると入れ歯が緩くなります。問題を早期に発見するためにも、定期的なメンテナンスをお勧めします。入れ歯の状態、残っている歯の清掃、噛み合わせのチェックなどを受けてください。これからもますますおいしく食べられるように、入れ歯とお付き合いください。