歯のQ&A

令和5年2月1日(水) 東日新聞掲載

マウスピースでできる歯の矯正治療があると聞きました。利点と欠点を教えてください
(20代女性)

[回答者]
豊橋歯科医師会・竹尾健吾
 マウスピースによる歯の矯正とは、正確にはマウスピース型矯正装置と言います。薄い板状の樹脂を歯列模型に圧接したアライナーと呼ばれる装置を用いて、歯を動かす方法を指します。近年、このマウスピース型矯正装置の使用が増加しており、様々な製品を目にするようになりました。矯正の記事を見ていると、マウスピース型矯正装置は優れた治療法であると思われる方もいると思います。しかし、現実的には治療の精度としてはワイヤー矯正の方が優れているところも多く、ワイヤー矯正でなければ治療できない症例もあります。
 その中で、一部症例においてはマウスピース型矯正装置の方が得意とするものや、患者さんのQOLを考えれば、多少のデメリットは理解した上でマウスピース型矯正装置の方が良い場合があります。
 マウスピース型矯正装置のメリットとして、①他人から見えにくい装置である。②装置の着脱が簡単で食事や歯磨きがしやすい。③金属アレルギーを有する方も使用できる。④異物感が少ない、等があげられます。デメリットとして、①歯の移動量の少ない症例に限られる。②毎日長時間の装着を必要とし、使用状況によって効果が大きく異なる。③骨格性要因を含む症例には適さない、等があげられます。
 マウスピース型矯正装置による治療には、以上のメリット・デメリットを踏まえた適応症の判断や専門的知識を必要とします。大切なのは歯並びを整え噛(か)み合わせを治すことで、矯正装置はその手段でしかありません。それをきちんと診断してくれる歯科医師にお願いすることが望ましいです。
 マウスピース型矯正装置による治療に関してご不明な点があれば、かかりつけ歯科医にご相談されることをお勧めします