歯のQ&A
令和5年9月28日(木) 東日新聞掲載
若い頃は歯が丈夫だったのに、最近虫歯になりやすいです。なぜですか
(70代男性)
[回答者]
豊橋市歯科医師会・門園 孝
高齢者は唾液を作り出す唾液線の機能の低下と、かむ筋肉の筋力が落ちてしまうため唾液腺が刺激されにくくなって唾液の分泌量が減ります。唾液は口内を洗浄する役割を持っているため、減少すると口内が乾燥して自浄作用が低下して、汚れが残りやすくなって口内の衛生状態が悪くなり虫歯のリスクが高まります。
また、高齢者は生活習慣病などの治療のために薬を服用することが増えますが、薬の副作用で唾液の分泌量が減少することがあります。
唾液分泌の減少に関連する薬剤としては、降圧剤や利尿剤、制吐剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤などがあります。
唾液の分泌量の低下を招く原因は加齢だけではありません。糖尿病になり高血糖になると、体内から糖を出すために尿量が増えて体内の水分が少なくなり、唾液の分泌量が少なくなります。
腎臓病も唾液の分泌量が減少します。
そして高齢者に多い虫歯の特徴としては、歯の根元が虫歯になりやすいです。
加齢によって身体の免疫力が低下してくると、歯周病菌への抵抗力が落ちてきて歯周病になることがあります。
歯周病になって歯肉がやせてくると、若い頃は見えなかった歯の根元の部分が露出してきます。
歯周病でなくても高齢者は歯肉がやせやすくなりますが、この歯の根元はエナメル質といわれる硬い組織がなくて、虫歯の原因である酸に弱いです。
高齢者は歯の根元が露出することによって虫歯になりやすくなるのです。この部分から進行する虫歯を「根面う蝕」といいます。
若い頃と違って年齢にあわせたお口のケアが重要になりますので、虫歯の早期発見と予防のため定期検診をお勧めいたします。