令和6年4月1日(月) 掲載

 歯周病が細菌による感染症だということを知っていますか?
 歯周病の原因は、歯にべったりとつくプラ-ク(細菌のかたまりで歯垢ともいいます)です。
 その中に潜む歯周病菌により引き起こされる炎症によって、歯を支える歯周組織(歯グキ・ 歯を支える歯槽骨・歯と歯槽骨を結んでいる歯根膜繊維)が破壊され、最終的には歯が抜けてしまうという怖い病気です。
 また、いったん破壊されてしまうと、元通りに回復させるのが難しい点でも、たいへんやっかいな病気です。
 歯周病がふつうの感染症と違うのは、病気の原因菌が普段から私たちの口の中にいる常在菌だということです。
 お母さんの産道を通って生まれてくるときに感染するのではないかとも言われていて、私たちと歯周病菌とのの付き合いは、生まれると同時に始まっているのかもしれません。
 ただし、感染したからといってすぐに歯周病になるわけではありません。
 常在菌である歯周病菌と人間は共存しているのです。
 しかし、歯みがきをサボったり、磨き方が雑だったりすると、プラ-ク(歯垢)が蓄積され、それが成熟するにつれて、歯周病菌は口の中で猛烈に増殖します。
 すると、それまで保たれていた共生のバランスが崩れ、炎症が起きます。
 これが歯周病の始まりです。
 歯周病の進行を止めるには、とにかく歯周病菌を追い出すことです。
 幸い歯周病菌は、空気にあたると死んでしまう嫌気性菌で、歯周ポケットの奥深くや歯石の中が大好きなので、温かで空気のない恵まれた環境のなかに潜んでいます。
 ですから、歯周病菌を減らすには、歯の表面だけでなく、歯周ポケットの中もしっかりと掃除をすることです。
 ご自身の丁寧な歯磨きにより、歯周病菌を徹底的に減らすことができます。
 最近、歯周病について、皆さまから寄せられた疑問にお答えします。

 Q.歯周病は生活習慣病なのですか?
 A.歯周病は生活習慣病です。朝は惰性で雑な歯磨きをして、タバコを吸って、夜はお酒を飲んで、歯磨きをしないで寝てしまう・・・、これらは全て歯周病を悪化させる生活習慣です。他に影響を及ぼすものとして、毎日の食事にも配慮が必要です。特に、柔かくて味の濃い(甘みも強い)ものばかり食べていると、ベタベタの食べカスが口に残り、プラ-ク(細菌)が増え、同じ食卓を囲む家族ぐるみで口の中の環境が悪化しやすくなります。生活習慣の改善は(なかなか難しいのが現実ですが)歯周病治療の重要な柱です。

 Q.歯周病になりやすい人となりにくい人がいますか・・・?
 A.口の中の歯周病菌の数が仮に同じだとしても、歯周病になりやすい人となりにくい人がいます。細菌感染に対する抵抗力も、生活習慣も一人ひとり違うからです。喫煙習慣や糖尿病があると、感染への抵抗力が落ち、当然歯周病になりやすくなります。また、生活習慣病である歯周病にとって、歯磨きの仕方や間食、軟食を好むなどの生活習慣は影響が大です。「家族ぐるみで歯周病になりやすい」という方は、ご家庭の生活習慣を疑ってみるのも大事です。両親が歯周病の子には、歯周病がうつることが多いので注意が必要です。

 Q.歯周病で糖尿病が悪化するってホントですか?
 A.運動しても食事療法しても糖尿病がよくならなかった人が、「歯周病の治療をしたら糖尿病のデ-タが改善した!」という研究結果が出ています。歯周病菌の出す毒素とからだの免疫機能が戦うと、インスリンの働きを鈍らせる物質が出て、血糖値のコントロ-ルが難しくなるからだと考えられています。糖尿病に限らず、動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)、心臓疾患(心内膜炎)、誤嚥性肺炎、妊婦における早産・低体重児出産などに影響することも判ってきました。お口の健康はもちろん、全身の健康のためにも、歯周病の治療を早期に始めましょう!