令和6年9月16日(月) 掲載

 人生100年の時代。 寿命が延びるにしたがって、歯はかつてない耐久性が求められるようになりました。歯への意識が高まったこともあり現在80歳の方の約半数が20本以上の歯を維持されており、それに伴って「歯はいったいどれくらい長期の使用に耐えうるのか?」私たちは未知の領域へと踏み込んでいるといって過言ではありません。
 当然ながら長く使えば歯は痛みます。
 噛む力は数十キロにもなるのですから、削れたりヒビが入って傷むのも無理はありません。
 歯をこれまでになく長く使うようになったいま、「知覚過敏」の裾野は大きく広がってしまっています。
 生活環境も変化しました。
 現代人は忙しい毎日を過ごしています。
 ストレスにさらされ、歯ぎしり、噛みしめ、食いしばりのクセのある方も増えています。
 多くの人は、就寝時などに無意識のうちに行っていて、歯を痛めていることに気付かないことが多いのです。
 歯ぎしり、噛みしめ、食いしばりはヒビ割れ、破折、すり減りなどのトラブルのもとで、歯の象牙質はむき出しになると、知覚過敏が起きやすくなります。
 また、私たちの生活習慣も変わりました。
 健康志向の高まりとともに、休日にはジョギングをしたり、自転車に乗ったり、プ-ルで泳いだりと、さまざまな運動を取り入れているかたが増えています。
 健康増進に役立ち、気分転換にもなる大切な習慣ですが、スポ-ツの中にも、実は歯にダメ-ジを与える要因が潜んでいます。
 たとえば水泳では、塩素のたくさん入ったプ-ルの水に歯がさらされます。
 プ-ルの水は酸性になっていることが多く、歯は酸に触れると溶けてしまう のです。
 また、酢(酸性)を使った飲料や食事も、健康に気を使うかたのあいだで大変 な人気です。
 そうしたことから、歯のエナメル質が溶けて薄くなってしまうと、知覚過敏のリスクは当然高くなります。
 いかがですか?
 現代人の生活は、歯にとってかくも過酷極まりない環境なのです。
 知覚過敏の症状の背景には、こうした無数のリスクが複合的にからみ合い、原因の特定は実際のところ容易ではありません。
 治療する際も、「軽度なのか重度なのか」、「どこからしみているのか」の診断を、ピンポイントで即時に断定することは、現在の医療水準では困難なのが実状です。
 直接見えない歯の内部で起きていて、しかもX線(レントゲン)に写らないほど小さな亀裂や詰め物の隙間なども痛みの原因になります。
 一見気づかないような細かいヒビが、とてもつらい知覚過敏を引き起こしていることもあります。
 一方、ひどく削れて象牙質が大きくむき出しになっているような痛々しい歯なのに、しみもせず、「まったく平気だ!」というケ-スもあります。
 このように、知覚過敏の症状は、見た目だけでは判断できません。
 一時期しみても、しばらく経つといつの間にか痛みがなくなることが多く、そのため「病気ではないから」と我慢してしまいがちです。
 たしかに、軽度の知覚過敏は、「放っておいたらいつのまにか治った」というものがほとんどです。
 軽度の知覚過敏では、歯に炎症がほとんど起こっていないので、ただ単に象牙質に刺激が加わらなければ、ピタリとしみはなくなります。
 時ならぬときにキ-ンとしみて、私たちを苦しめる知覚過敏。
 「病気ではないし…」、「そのうちおさまるだろうから」と我慢をしてはいませんか?
 慢性化したり、症状が重くなる前に、ぜひ歯科医院でご相談ください!