令和7年7月28日(月) 掲載
1989年に「80歳になっても自分の歯を20本以上保てるように」という「8020(はちまるにいまる)運動」がスタートしました。開始当時これを達成している人は10人に1人程度でしたが、2022年調査では80歳の2人に1人くらいの方がこれを達成していることがわかりました。高齢になっても残っている歯は増え、自分の歯で噛める方も増加していると推測される一方で、高齢者のう蝕有病率は経時的に上昇しています。
高齢者に特徴的なう蝕としては歯の歯根にできる「根面う蝕」があります。歯の部位は食物を噛み潰す歯冠と骨に支えられている歯根に分けられます。加齢や歯周病により歯を支えている骨が少なくなると歯根がよく見えるようになり、歯が長くなったと感じたりすることもありますが、この見えるようになった歯根にできる虫歯が「根面う蝕」です。進行すると根面う蝕になった根の部分で歯が折れてしまい、歯冠を含めた歯の大部分を急に失うことになります。失う部分が多いためにその後の修復治療が困難になりやすい厄介な虫歯でもあります。
根面う蝕ができやすくなる要因としては次のようなことがあげられます。歯根は歯冠と組織的な成り立ちが違うため歯冠よりも耐酸性が低く虫歯になりやすい。根と根の間の隙間はよごれがたまりやすく歯ブラシだけではよごれを取り除きにくい。しみる、痛いなどの自覚症状が乏しい。また加齢により唾液が出にくくなっており口腔内が乾燥しやすく、唾液による酸の中和作用、歯の修復作用も弱くなっている等です。
根面う蝕を予防するためにはどのようなことに注意したら良いでしょうか。やはり日々の食生活と歯磨きが重要となります。通常の歯ブラシだけでなく、歯間ブラシ、ワンタフトブラシ、デンタルフロス等の補助器具も使ってしっかりと汚れを落とすことが必要です。磨く時には歯根と歯根の間、歯根と歯肉の境目は特に注意して磨きましょう。またフッ素濃度1450ppmFのフッ化物配合歯磨剤、フッ素洗口剤を併用すると良いでしょう。